農園を始めるまで
🍇 農園を始めるまで
Mファームヴィーニャ八ヶ岳 ― 人生100年時代、後半のチャレンジ ―
私は長年従業員3万人の企業で会社員として働いてきました。会社全体の中からすると、
ごく一部の担当領域の中での仕事でした。
50歳を過ぎた頃、「これからの人生は、小さくても自分で全て決めてやり切る仕事に挑戦してみたい」と強く思うようになりました。
人生100年時代。
その後半をどう生きるかを考えたとき、浮かんだのは“小さい農業”という生き方でした。
ぶどうとの出会い
機械化が難しく、人の手と感性が活きる作物を探し始め、
国産アボカドやヨーロッパ野菜など様々な農作物を調べました。
その中で出会ったのが「ぶどう」です。
ちょうどその頃、四国にある農園さんが
YouTubeでぶどう栽培のノウハウを惜しみなく発信しているのを見つけ、
その情熱と実践的な情報に強く惹かれました。
自分でも一から挑戦できるかもしれない――そんな希望が芽生えました。
八ヶ岳という舞台
拠点に選んだのは、八ヶ岳南麓・西麓の標高1,000mの地。
この地域ではまだ生食用ぶどうの栽培は盛んではありません。
しかし、年々進む地球温暖化を考えると、
標高の高い地域でのぶどう栽培には大きな可能性があると感じました。
また、八ヶ岳のふもとは、子供の頃から家族で訪れていた場所でもあります。
清々しい空気や四季の変化、そして目の前に広がる八ヶ岳や甲斐駒ヶ岳の雄大な景色がずっと心に残っていました。
そんな馴染みのある土地で新しい挑戦を始めたいという想いが、
この地を選ぶ大きな理由となりました。
しかし、全くの新規就農者にとってはハードルは非常に高いのが現実です。
農地探しはほとんど不可能に近く、
支援施策にも年齢制限があったり、
地域の特産物以外の作物をやろうとしても賛同を得にくいという壁がありました。
未経験者が新たに参入できる環境は、決して整ってはいません。
それでも、諦めずに動き続けた中で、たまたま良い人との出会いに恵まれ、農地を借りることができた——。
それが、Mファームヴィーニャ八ヶ岳の本当の始まりでした。
名前に込めた想い
「Mファーム」の “M” には、3つの意味を込めています。
山(Mountain)、笑む(えむ)、そして園主である私の名字 前田(Maeda) の“M”。
ぶどうが甘く熟し、その一粒を口に入れた瞬間に、
自然と“笑み”がこぼれるような味わいをお届けしたいという願いを込めました。
そして「ヴィーニャ(Viña)」は、スペイン語で“ぶどう園”を意味します。
長野県茅野市の国宝土偶「仮面の女神」や、ビーナスラインの“ビーナス”にあやかり、
女神(ヴィーナス)を連想させる響きをもつ言葉として選びました。
八ヶ岳の美しい自然とともに、女神のように人々を微笑ませるぶどう園でありたい。
そんな想いが、「Mファームヴィーニャ八ヶ岳」という名前に込められています。
自分で全て決めてやり切る、だから楽しい
会社員時代は「担当領域の中での仕事」だった。
今は「自分で全て決めてやり切る仕事」。
その責任も楽しさも、すべてが新鮮で、やりがいに満ちています。
まだ小さな農園ですが、自然の力と人の想いを大切に、
八ヶ岳の恵みを感じていただける「ぶどう」づくりを目指しています。
最後に
Mファームヴィーニャ八ヶ岳の「ぶどう」を通じて、
「こんな味があったんだ」と感じてもらえるような感動を届けたい。
そして、同じように人生の新しい一歩を考えている方へ、
少しでも勇気を与えられるような存在でありたいと思っています。